実は学生の頃から剣道をしているのだが、社会人になった今でも、部活の延長線上で他校のOB同士で集まって稽古をしている。というか、稽古をした後に飲むのが楽しくて皆集まっている。笑
ある日、深夜まで飲み会があり、残った4人で渋谷で始発までカラオケにいた。
そろそろ始発、ということで会計を済ませ外に出ようとすると…
自動ドアを出ようとしたところで、先輩と、正面からきたガラの悪そうなお兄さんが鉢合わせ。お兄さんが被っていた帽子のツバが先輩の額にこつん、と当たった。
「いってーな、何すんだよ。」
と言ったのはガラの悪いお兄さん。
え?帽子やん?
皆おもったのだが、面倒臭そうなので、すみませんでした〜と言ってそそくさと立ち去った。
ところがそのお兄さんは私達を追いかけてくる。
「おい、ぶつかっただろーが。詫びはねーのかよ、詫びは。」
とスクランブル交差点のど真ん中で何故か私の肩を掴んで言い寄る。
ええ!?私!?
それを見た先輩が間に入る。
「さっき、すみませんって言いましたよね?」
あからさまに不機嫌な先輩。
お兄さんは、再度帽子のツバを先輩の額にグリグリ擦り付けながら、
「あぁ??聞こえねぇよ。土下座しろよ、土下座!」
と興奮気味。
この人、私たち皆んな竹刀持ってるのに、よくやってくるな……
と、突如、先輩が腕時計を外して鞄に入れ始めた。ちょっとこれ持ってて、と言ってその鞄を私に渡す。
次の瞬間
がんっ!!っと凄い音がしたと思ったら、お兄さんが地面に倒れ込んでいた。
先輩がお兄さんに回し蹴りを入れたのだ。
お兄さんの頭はちょうどマンホールの上。
先輩はそのお兄さんの頭を掴むとマンホールに押し付け、まるですりおろすかのごとく擦り付けた。
「そんな土下座してほしかったらまずお前がしろ!そもそもぶつかってきたのお前だろ!関係ないやつまで巻き込むんじゃねぇ!わかったか!?」
お兄さんが小刻みにこくこく頷き、か細い声で、はいっと言うと、先輩は満足げに立ち上がって
「よし、帰るぞ!」
と渋谷駅に消えて行った。
この話は伝説となり、今でも飲み会のネタとなっている。
マンホールで人をすりおろす男、最強である。
でも、後輩思いのいい人なんですよ。
一応補足しておく。