プロローグ
珊瑚の中にゆらゆらと揺れる、青い魚の群れ。
深い青の中に暖かな光の筋が差し込み、揺れる波にあわせて、変形して光彩を放つ。
水の中でフィンを蹴り出し、光の筋の中を下へ下へと進む。
口の端からこぼれた空気が泡となり、重力に逆らって登っていく。
もっと深くへ。
ぐん、と体をすすめると、ひんやりとした水温が伝わってきた。
突然の来訪者に、魚の群れが驚いたように次々と身を翻す。
触れられるようで触れられない、絶妙な距離。
やがて、空気を求めて肺が暴れだした。もう限界か・・・
ゆっくりと海面に浮かび上がり大きく口を開けると、塩辛い水と共に、空になりかかった肺の中に空気が入ってくる。早くなった鼓動を耳の奥で感じる。
何度か大きく息を吸い込むと、揺蕩う木の葉のように、波に体を預ける。
水の冷たさと太陽の暑さが心地いい。
生を、感じる。