口腔外科医のあれこれ

某市中病院で働く口腔外科医が、日々の診療のことや旅行記などなどを書いています。フィクションあり、ノンフィクションあり。信じるか信じないかはあなた次第。

スパルタ研修医

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ある日、研修医の中山が奥の控え室で唐突に筋トレを始めた。

彼はもともと柔道部だったのだが、この病院にきてからめっきり部活に顔を出しておらず、体の衰えを感じていたのだとか。

控え室の床に這いつくばって腕立て伏せと腹筋を繰り返す中山。

 

それを見た部長が、

「よし、腹筋ローラーを買おう!」

と言い始めた。

なんでも3歳の娘さんに、パパお腹デブ〜、と言われ、病院の検診でもメタボと診断され栄養指導を受けるハメになってショックを受けたのだそう。

早速腹筋ローラーとプッシュアップバーをネットで購入する部長。

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数日後、病院の事務に荷物が届いた。事務に取りに行った中山がルンルンしながら帰ってきた。箱を見ると…思いっきり、腹筋ローラーと書いてある。

事務的にはいいのか?これ……

 

そんなこんなで、衛生士さんと部長、中山、私の4人での筋トレが始まった。

筋トレをした日にはカレンダーで印をつけていく。誰かがやっていると、やらなきゃ!となるようになんだと。

腹筋ローラーは最初はかなーりキツイ。

膝をついていても、地面スレスレまで体を倒すと戻す時が苦しい。

慣れてくると膝をつかないでやるのだが、アラサーの体にはなかなかきつい。

しかし、楽をしようとすると途端に中山からゲキがとんでくる。

「先生、まだまだ甘いっすよ!まだ倒せます!もっともっと!!」

「いつまでも膝ついてちゃだめです!立ちでいきましょう、立ちで!!」

「もっとお腹に力を入れて!丸めるように!」

こいつ……私の腹筋をどうしたいんだ!?

 

いつもの診療の憂さ晴らしかと思うほどのスパルタぶり。

しかもそのスパルタ筋トレは私だけではなく部長にも行われていたのだから衝撃である。

 

部長がある日、腹筋ローラーに疲れたのか、

「うちにさぁ、ワンダーコアがあるんだよね。使ってないから持ってこようかな、あれ楽だし。」

と言い始め、その週末、本当にワンダーコアを持ってきた。

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腹筋ローラー、プッシュアップバー、ウェイト10kg、ワンダーコア

ここはもはやジムなのか…?

 

ワンダーコアは楽に腹筋が出来るのがウリだが、ここでも中山のスパルタは止まらない。

 

「ちゃんと起きる時に腹筋力いれてますか!?」

「もっと後ろに倒して!」

 

ワンダーコアの効果なのか、中山のスパルタ指導のお陰なのかは不明だが、お陰様でめでたく部長は脱メタボ達成となった。

 

それを見た中山は、

「僕、診療では一番下ですけど、筋トレに関しては部長クラスですね!口腔外科の筋トレ部部長になります!」

と言い放つ。

うーん…そのポテンシャル、もっと他の所で発揮しようね。

 

今は中山は母校に戻ったのだが、相変わらず筋トレに勤しんでおり、医局の先輩を巻き込んで新たに筋トレ部を設立したんだそうな。

 

頑張れ、中山。