呼吸器内科で当直をしており、深夜に上級医と一緒に救急外来で肺炎患者の診察をしていると、救急外来の電話がけたたましく鳴った。
「はい、〇〇病院救急外来です!」
看護師さんが電話をとる。
はい、はい、と電話を片手に頷きながらまじめにメモをとっていた看護師さんの顔が、次第に呆れ顔に変わる。
「少しお待ちください、確認します。」
そう言って当直医に電話をし始めた。
「先生、20代女性、肛門異物です。受けますか?………わかりました、来てもらいます。」
かくして、肛門異物の女子が来ることに。ざわつく救急外来。
上級医も、
「お、肛門異物くるのー?じゃぁ手伝おっか!あれ結構大変なんだよ〜」
とやる気満々。
この上級医、当直大好き君なのである…
私としては早く部屋で仮眠をとりたいのだが…上級医には逆らえん。
10分程で救急車が到着、彼氏らしき人に付き添われた女性がストレッチャーで入室、私たちの隣のブースへと移された。
担当の当直医が来るまでの間、私たちは隣のブースでパチパチカルテを打っていたのだが、何やら、ブブブブブ…という音が隣から聞こえてくる…気がする。
5分程で当直医が到着、問診が始まる。
「えーっと、経緯を聞かせてもらっていいですか?」
彼氏らしき男が話し始める。
「あ、はい…実は、Hの最中に…その…あの…お尻にバイブを入れたら取れなくなっちゃって……取ろうと思ったんですけど、痛がっちゃって取れなかったんです…すみません…」
「あー…わかりました。ちょっとレントゲンを撮りましょう。お腹が痛いとか、張ってる感じとかはないですね?」
こくこくと頷く彼女。
「……因みに、この音って…もしかしてまだ動いてます…?」
そう、やはりあの、ブブブブブ…という音は続いていた。
「あ…はい…あの…電源が本体についてるので止められなくて……」
「そうですか。撮影には支障ないので、このまま行きましょう。彼女さん、大丈夫ですね?」
またもやこくこく頷く彼女。顔は真っ赤である。
まぁそりゃそうだ……
レントゲンには見事に直腸に入ったバイブが映っていた。
腸に損傷はなさそう、ということで、救急外来で摘出を試みることに。
肛門鏡と鉗子を駆使して摘出を試みるが、彼女の力強い肛門括約筋に阻まれ器具操作が困難であった。局所麻酔をしても全く変化がない。そしてなにより、痛がる患者を見ていられなくなり、手術室で手術することになった。
彼女が手術室に運ばれていく間に、当直医から手術に関しての様々な説明が彼氏に行われた。
最後に、
「今度お尻に物を挿入する時は、専用のもの、かつ、紐がついたものを選ぶようにしてください。今回は直腸だったから良かったですが、もっと上の方に行ってしまったら、最悪人工肛門をつけるハメになっていたかもしれないんですよ。」
と、淡々と説いた。
彼氏は小さくなり、
「はい、すみませんでした。」
と恐縮しきり。
彼女は局所麻酔で無事バイブを摘出され、1泊入院し、彼氏に付き添われ帰っていった。
ちゃんと付き添ってくれる彼氏でよかった。
前にも書きましたが、アナルに物を挿入する時は、必ず紐がついたものを!!!
取り出すのほんっっっとーに大変です!!
そして、なぜまたこんな記事を…というと、最近私のツイッター周りで肛門異物の話がバズっているんです。
その大元は、くづ救急科医先生。
めっちゃ面白いです…もう、肛門異物専門医です。笑
是非、読んでみてください。
あ、ほかの記事もわかりやすくて面白いですよ!決してアナルの話だけでは……笑
ちなみに、私が前に書いた肛門異物系記事はこちら↓
なんか番宣みたいになっちゃいましたね。笑
私にはもう肛門異物系ネタはありませんので、悪しからず。